FIRE本の鉄板ともいえる本です。記事はFIREする上での技術面にフォーカスして書きましたが、実際には様々な具体的事象に対し、どのように考え対応したのかが書かれています。この部分の方が重要ですので、ご興味のあるかたは本書購読をおすすめします。
目次
<FIRE 最強の早期リタイア術>の概要
FIREムーブメントは、ブログで広まっていきました。著者はその中でも有名なインフルエンサーです。
FIREムーブメントの立役者であるクリティスティー・シェンの著作です。 中国人である彼女は家族と共に渡米し、FIREに関する情報をブログで発信し続け、そのサクセスストーリーが全米の共感を呼びました。 クリティスティー・シェンは中国の農村で生まれ、家族は一日44セントの生活をしていました。 今まで最も感動した経験は、初めてコカ・コーラを飲んだ時でした。そしてそのコーラの空き缶が最も大切な持ち物になったといいます。 そんな生い立ちの彼女が家族の渡米を期に、節約を重ね貯金に勤しみ投資で資産を増やしながら、FIREに至った訳ですが、どのようにして実現できたのでしょうか。
この本のポイント(技術面にしぼって)
- 4%ルール
- 現代ポートフォリオ
- サイドFIRE・パーシャルFI・地理的アービトラージ
FIREを実現する為の技術面のポイント3つ
著者の実践を通してFIREを説明しています。
<4%ルール>で経済的自立の為の資金計画をたてる
あまりに有名な理論ですが、この4%ルールをクリティスティー・シェンが世に広めた功績は大きいです。 この理論はトリニティ大学における論文が基になっています。 当論文は退職者が金融資産(ポートフォリオ)から一定割合の金額をを引き出しつつ、残りの資金をそのまま投資しておいた場合、ポートフォリオがどうなるかを調べました。 そして95%の成功率、つまり100人の退職者のうち95人が一文無しになることなく、老後を全うできる引き出し率を割り出しました。 それが4%という数字です。 つまり、ポートフォリオの4%の資金で1年間の生活費を賄えれば、30年以上元本割れしない確率が95%あるということになります。 そして4%の逆数である25を一年間の想定生活費にかければ、FIREできる金額に到達したということになります。 (例:月30万円の生活費であれば、30万円×12カ月×25=9000万が必要) 実際は65歳以上でもらえる年金等もありますので、個人毎にシュミレーションは違いますが、FIREを検討する上でベースとなる考えになるかと思います。 ところでちょっと待った!FIRE民の5%は少なくとも破産するのでは、と思いますよね。 中年になってからの就職は厳しいです。なんとしても最悪に事態はさけたいものです。 本書の中で著者は破産のリスクについての対処についても、現金クッションと利回りシールドいう考え方を取り入れています。 現金クッションとは、生活防衛資金を指します。著者は5年分の生活防衛資金を確保すれば、下落相場のあいだ投資の元本に手をつけずに済むと考えました。 そしてなにも5年分の現金を用意する必要もなく、株の配当金を生活費に補充すればよいといいます。これが利回りシールドです。 補足となりますがFIREをする上での資金計画は、4%ルールだけでなく、生活防衛資金や不労所得(配当など)を考慮する必要があります。
<現代ポートフォリオ>でリスクを下げる
著者は現代ポートフォリオ(モダンポートフォリオ)理論をベースに資産管理しています。 現代ポートフォリオ理論では、期待リターンとボラタリティの2つの指標で構成されます。 そしてこの二つの指標を組み合わせて、効率的フロンティアと呼ばれる曲線を作ります。 リスク=ボラタリティと言い換えることができると思いますが、このボラタリティをコントールすることで許容リスクを設定できることができます。 著者のデフォルトテンプレートは、株60:債券40の比率で年齢と共に債券の割合を引き上げるという考えだそうです。 また地域分散としては、カナダ34%、米国33%、欧州33%としています。 (このポートフォリオはあくまで目安ですので、時代と共に変わるとご認識ください) そして金融商品はETFと投資信託を薦めています。
<サイドFIRE・パーシャルFI・地理的アービトラージ>でリタイアのハードルを下げる
お金はあるにこしたことはないですが、完全な資金を用意するには時間がかかりすぎます。そのハードルへの対策を3つ挙げています。
著者は3つの方法<サイドFIRE・パーシャルFI・地理的アービトラージ>でリタイアのハードル下げることができると言います。 <サイドFIRE>とは、100%経済的に自立してなくてもリタイアするという考え方です。 つまり、100%に満たない数%は副業やアルバイトでカバーする方法となります。 この方法を使えば、リタイアの時期を大幅に前倒しすることができます。 <パーシャルFI>とは、正社員から非正規社員、派遣やパートに労務契約を切り変えて、仕事や労働時間の負荷を下げることを指します。 パーシャルFIには、看護婦等の資格職が向いています。 <地理的アービトラージ>とは、強い通貨の国(米国など)で収入を稼ぎ、弱い通貨の国(タイ、マレーシアなど)でリタイア後の生活を送るというものです。 日本でも、年金生活者がアジアの国でリタイア生活することが流行りましたね。
終わりに
この「FIRE 最強の早期リタイア術」はFIREに興味がある人には、最初に読むべき本の一つかもしれません。 具体的な著述が多く、普通に日本人でも実践できることばかりなので参考になるかと思います。 4%ルールや現代ポートフォリオ等、技術的な内容も多いですが、FIREに向けたマインドセットについても十分な記述がなされています。 副題が「最速でお金から自由になれる究極メソッド」「30代で経済的自立を達成するための全技術」となっており、少し盛ってそうな感じの表紙ですが、全く誇張でもなく、FIREに至るまでの王道が書かれています。 本書では、お金よりも自由(時間)を優先するという考え方が、最も重要な部分となります。 あくまで主役は自由あるいは時間であり、お金は脇役であり決して奴隷にならないようにと文中で何度も説いています。 FIREの枠組みを押さえたいという人には、おすすめの本です。 了
FIRE 最強の早期リタイア術
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