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ウィリアム・オニールの成長株投資法(CAN-SLIM)
グロース株投資の第一人者といえば、ウィリアム・オニール氏の名前を挙げる人は多いのではないでしょうか。 カップウィズハンドルというチャートパターンを知っている人は多いと思いますが、これを世に広めたのがオニールです。 彼は、自身の投資手法を<CAN-SLIM>という体系にまとめ、名著「オニールの成長株発掘法」にまとめています。 また彼の会社は「Investors Business Daily」という投資情報紙(WEB版有り)を発行し、成長株に焦点を当てた情報発信を行っています。
グロース株投資って上級者向けというイメージなんだけど、投資初心者でもできるのかなぁ?
初心者でも全然大丈夫!
確かにグロース株投資はある程度勉強が必要なので、小ロットで始めた方がいいけど、しっかりリスク管理できれば他の投資法より安全ともいえるよ。
CAN-SLIMとは
CAN-SLIMは成長株へ投資する上での手法を体系化したものです。 テクニカル分野(チャートパターン)、ファンダメンタルズ分野(EPS成長率や売り上げ成長率)、そしてマーケット全体の方向性に基づき銘柄を選定し売買するというものです。 グロース株投資の基本は、「高く買って、より高く売る」という言葉につきると思いますが、オニールの手法はその王道と言ってもよいでしょう。
CAN-SLIM
- C (Current Quarterly Earnings) 当期四半期のEPSと売り上げ
- A (Annual Earnings Increases) 年間の収益増加
- N (Newer Companies, New Products,New Management,New Highs Off Properly Formed Bases)新興企業新製品、新経営陣、正しいベースを抜けて新高値
- S (Supply and Demand) 株式の需要と供給
- L (Leader or Laggard) 主導銘柄か停滞銘柄か
- I (Institutional Sponsorship) 機関投資家による保有
- M (Market Direction) 株式市場の動向
<CAN-SLIMの“C”>当期四半期のEPSと売り上げ
最新の四半期のEPSが前年同期比で、大きな伸び率を示している銘柄を選ばなければならない。とされています。 なぜ前年同期比かというと、季節性の変動の影響を排除する為に直前の四半期ではなく、前年の同年四半期を比べる必要があるということです。 そして、EPS増加率は最低でも25%~30%は必要とされています。 さらに成功率を上げる為に、過去2四半期続けて、大幅にEPSが増加している銘柄を選ぶほうが良いでしょう。 そして売り上げについては、直近の四半期に少なくとも25%以上増加しているか、売り上げ増加率が直近3四半期で加速していることが最低条件となります。 またその銘柄が所属する業界のなかでも最上位であったり、同じ業界や産業に強いEPSの増加率を示している銘柄が他にも存在しているならば、成功率はさらに上がります。
EPSと売り上げの両方で確実に成長している銘柄を探すのが大事!
<CAN-SLIMの“A”>年間の収益増加
年間のEPSが過去三年連続で増加している必要があります。 その銘柄の年間EPSの増加率が最低でも25%。通常は50%や100%以上のものを選びましょう。 ROEは最低でも17%以上が必要です。 PERは株価の動きとは関連性がなく、売買判断には約に立たないそうです(私も経験上そう思います)。 つまり、銘柄選択で最も重要視するべきなのはPERではなく、EPSの変化率が著しく増加しているかに着目すべきなのです。
年間ベースでのチェックポイントはEPS増加率とROE!
グロース株投資ではPERは無視していいです。
<CAN-SLIMの“N”>新興企業新製品、新経営陣、正しいベースを抜けて新高値
株価が高すぎてリスクが高そうに見える銘柄はさらに値上がりし、株価が低く割安に見える銘柄はさらに値下がりする傾向があります。 買いの絶好のタイミング(ピボットポイント)とは、強気相場で株価がベースから上へブレイクアウトし始めた時です。 これはカップウィズハンドルの取っ手の部分のブレイクアウトをイメージしてもらえれば良いと思います。 (株価のベース(地固め)形成期間は、通常7~8週間、長い時で15カ月) また企業規模は中小企業を選んだ方が伸び率が高いです。これは発行株式が流通してないことに起因します。 その他、画期的な新製品や経営陣の刷新なども注目指標の一つです。 経営陣のチェックポイントは、管理型か起業家型かです。 いうまでもなく起業家型の優秀な経営者を要する企業を選ぶべきですね。
カップウィズハンドルの新高値は狙い目なのでウォッチリストに入れて管理しておこう!
画期的な商品とか経営陣が刷新したというニュースも要チェック!
<CAN-SLIMの“S”>株式の需要と供給
発行株は少ない方が良いとされます。 成長株は特に株式分割を行うケースがよくありますが、例えば1対3や1対5より、1対2や2対3で行ったほうが良いです。 過度の株式分割は供給量が一気に増える為、値動きの重い「大資本」の企業状態に陥りやすいからです。 株の「売り」については、別の記事で触れようと思いますが、株式分割があった時には大きく株が上がる傾向がありますが、それが過度なものであれば「売り」の絶好のタイミングになります。 また、長期間かけて継続的に自社株買いを行っている企業も見込みがあります。 これは、流通する株式数を減らすだけでなく、企業が今後の売り上げや収益の改善を見込んでいるということを暗示します。 また、株価がベース(地固め)からブレークアウトするとき、出来高は少なくとも通常時の40~50%以上になることが望ましいです。 これは、その後の株の大量買いが期待でき、さらなる上昇が見込めるからです。 それから経営陣が多くの株式を保有している企業のほうが投資対象として望ましいです。
ヨコヨコからのブレークアウトの時、出来高も併せて要チェック!
流通してる株数が多すぎない銘柄の方がベターです。
<CAN-SLIMの“L”>主導銘柄か停滞銘柄か
業界内で上位2~3位の銘柄(主導銘柄)にしぼる必要があります。 他の企業が全く振るわない時でも、主導銘柄は信じられないような成長を見せることがあります。 一方で「共振株」と呼ばれる同じような製品をもつ競合企業の株は停滞することがあります。 主導銘柄と停滞銘柄を見分ける方法として、レラティブストレングスを持ちいる方法があります。 レラティブストレングスについては、オニール独自の方法で、氏が主宰する「Investors Business Daily(略してIBD)」紙で確認できます。 IBDは有料の英語サイトでハードルが少し高いので、簡易的にレラティブストレングスを計る方法として、各種指標やETFと対象銘柄を比較するという手があります。 総合指数(S&P500やナスダック等)や業界の指数と対象銘柄を比較チャートで確認することで、全体と比較して強いのか弱いのかが確認できます。 比較チャートはTradingViewがおすすめです。簡単に比較が可能です。 特に市場全体が調整局面を迎えたり下落を始める時が、新しい主導銘柄がみつかりやすい時期とされています。
指数をアウトパフォームする銘柄を絞り込むという作業ですね。
<CAN-SLIMの“I”>機関投資家による保有
何社の機関投資家によって株が保有されているのかだけでなく、最近の数四半期でその銘柄を保有する機関投資家の数が直実に増加しているかに着目します。
(ただし、機関投資家による株の保有が増えすぎるのも問題で、多くの機関投資家が保有している銘柄は、マーケットが下落した時に大規模な売りが起こる危険性を秘めています。)
平均以上の投資成績を残している機関投資家が保有する銘柄で、さらに最近の四半期で機関投資家の数が増えた銘柄を買いの銘柄の条件にすることが良いとオニールは述べています。
優秀なファンドを見つけたら、目論見書等の開示情報を確認しよう!
その中で保有銘柄が確認できます。
<CAN-SLIMの“M”>株式市場の動向
主要な株価指数を注意深く観察することから始まります。
オニールは、毎日観察することでマーケットの天井や底がわかると説きます。
さらに相場サイクルについても知識として持っておかなければなりません。
例えば機械等の資本財産業にいる企業群はあ株式の相場サイクルに遅れて動きます。
資本財産業の株が特別に調子が良かったりする場合は、景気サイクルの終盤にいることがわかります。
また弱気相場では、株価は寄り付きで強く、引けで下落する傾向があります。
反対に強気相場では、寄り付きで弱く、引けで上昇する傾向があります。
天井を打つ直前で、大量の出来高を伴う売りが4~5週間に3~5日おきることがあります。
つまりディストリビューションデイ(売り抜け)は市場がまだ上昇中におきるのです。
このディストリビューションデイの見極めもまた、市場の動向を知る大きな手掛かりになります。
ある指数で前日の出来高より増加したのに株価は下げて引け、その下落率が0.2%以上であればディストリビューションデイとしてカウントします。
また、大きく下落した後、翌日寄り付きは強かったのに、引けが近づくにつれて株価が下落するケースも下落相場を示唆しています。
その他の指標として、上昇相場を引っ張ってきた主導株の大多数が異常な動きを見せ始め、代わりにボロ株が浮上し始めたら、市場が転換期を迎えたと確信できます。
上昇相場への転換期はこの下落相場への転換期の逆をイメージしてもらえれば良いです。
このように株式市場の大きな流れは予測可能であり、下落相場に入る時には株を売り払い、現金を多めに確保しておかなければなりません。
長期投資家は、不況公共に関わらず常に全資金を市場に投入する傾向がありますが、とても危険な行為です。
本当の下げ相場になると50%以上下げる事は珍しくなく、それを取り戻すには100%以上のリターンを得なければなりません。
所感
オニールの投資法は基準が明確だからグロース株に興味がある人には良さそうね!
損切りができる人限定の投資法だけど、トレードの質は間違いなく高まるよ!
CAN-SLIMは個人投資家しかできない手法であり、機関投資家にマネができないものでもあります。
個人投資家は絶対リターンを求めるのに対し、機関投資家はベンチマークに対する相対リターンを追及するもので、質的に全く違う投資であると言えます。
個人投資家は優位な投資環境の時に優位な銘柄に柔軟に集中投資できます。
また下落相場では待機する事ができます。
機関投資家は頻繁に売買することはできませんし、常にフルインベストしなければいけない宿命にあります。
個人投資家であることの優位性を活かして、機関投資家を出し抜くようなクレバーな投資がしたいものですね。
その為にも世の風潮に流されず、オニールのような優れた投資法を使いながら、自分の判断に基づきトレードすることが大切です。
了
オニールの成長株発掘法
グロース株投資法(オニール流)
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【本の紹介】オニールの成長株発掘法
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