この記事を書いた人
- 2021年~ アーリーリタイア(FIRE)
- 50代 4人家族 愛知県在住
- 純金融資産は1億円台
- 住宅ローンは9年間で完済
- 投資歴は約20年
※資産形成の詳細はプロフィールを参照ください。
目次
はじめに
対面証券と付き合う上でのメリット、デメリットを元業界人の立場で記事にまとめてみました。
ネット証券は使っているけど、対面証券には口座を持ってないという人も多いかと思います。 僕が自営業で失敗し途方に暮れていた頃に、たまたま対面証券の会社で求人があって、お世話になったことがあります。 対面証券というのは店舗型の証券会社を指します。大手ですと野村証券や大和証券などが有名ですね。 僕はこの2社とは違いますが、大手の対面証券でかれこれ8年程勤務しました。 職種は管理部門だったので、これからご紹介する内容は直接顧客と接する営業マンとは違う立場での意見となります。 題名では「闇」と書きましたが、決して盛っている訳ではありません。 潜在的に問題が多いので、対面証券と付き合いのある方または興味のある方には参考にして貰えるとよいかと思います。 そして一方で、対面証券の良いところもあるので、付き合い方を選ぶことで投資家のメリットはあると考えています。
対面証券を取り巻く背景
証券業界は監督省庁である金融庁によって、ガチガチに指導され管理されています。 そのため業態や金融商品そして社内のコンプライアンスに至るまで、金太郎飴のようにどの会社も同じになっています。 銀行や保険会社などの金融業界をイメージして貰えるとわかりやすいですが、三井系、三菱系、住友系等どこも似通っていますよね。証券会社も同様です。 そして、証券業界が抱える苦悩も各社共有しています。どこの会社も収益の根っこを金融庁にしっかり握られていて、収益面で大きな逆風が吹き荒れているのです。 証券会社の利益とユーザである投資家の利益は相反します。 商売は突き詰めると、どの業界でもそのような構造になりますが、証券会社に限っては金融庁からの厳しい締め付けで、利益が出にくいビジネスモデルになっています。 少し前は、高齢者を大損させ老後の蓄えがなくなったとか、手数料の高い商品を回転売買してべらぼうな手数料をせしめたとか、そんな話は日常茶飯事でよく聞きました。 そういった永きに渡る不信感があるのではないでしょうか。 世間からの目だけではなく、監督責任をもつ金融庁からしても、証券会社が儲かる商品は投資家にとってボッタクリ商品だというコンセンサスが出来上がっているのかもしれません。
対面証券の代表である野村證券や大和証券の口座数や、営業収益の低迷が目立ちます。 一方で、ネット証券のSBI証券や楽天証券などは大きくビジネス規模を拡大しています。 ユーザーである投資家にとっても、使い勝手の良さ、手数料の安さ、商品の品揃え等のほぼ全ての面で、ネット証券が対面証券を上回ってますよね。 さらにネット証券は、店舗や営業マンを持たないので会社の運営コストも各段に安いです。 このようにビジネスモデル上のKPIが圧倒的に優れているので、ネット証券の口座数が伸びているのは必然です。 そして対面証券にとって厳しいのは、競合のネット証券の存在だけではありません。 金融庁の厳しい指導の元に、収益が出すのが難しい構造になっていることが追い打ちになっています。 昔の対面証券は、仕組債(EB債)やアクティブ投信等の手数料がたっぷり乗った金融商品を回転売買することで、大きな収益を挙げていました。 しかし金融庁が、投資信託の回転売買を禁じる等の容赦のない処置が続き、対面証券は大きく収益力を失うことになります。
野村HDの株価はリーマンショックで暴落してから、15年たっても、なかなか立ち直れていません。
対面証券のメリット
対面証券のメリット
- IPOの割り当てが圧倒的に多い。
- 相続税対策に強く、節税のアドバイスが貰える。
- 優秀なアナリストを抱えており、資料やセミナーで優良な知識を得られる。
一言でいうと、超富裕層にとっては対面証券と付き合うメリットは大きいです。 富裕層の下レベルだと正直恩恵がないです(実感)。 証券会社も商売ですから、顧客の資産規模や取引額で優良顧客かどうかを判断しています。とうぜん優良顧客にはIPO株を沢山配ってくれます。
IPOの主幹事は圧倒的に対面証券が多いです。ネット証券ではまず当選することがないIPOですが、対面証券の営業マンは、そんなプラチナチケットを大量に持っています。 当然VIP対応の顧客には、かなり割り当ててくれます。 数十万円、数百万円儲かるので、うまく対面証券と付き合うことができれば、多少手数料が高くても簡単にペイできます。 また、お金を持っている人とのネットワークが絶対的な強味なので、富裕層の悩みに対するソリューションはしっかり持っています。 特に相続税対策などの問題解決力は高いです。 例えば相続税が低減する保険商品があったりするので、相続で悩んでいる富裕層に結構売れます。 保険はびっくりするほど儲かるので、僕が所属していた支店では、保険にかなり力を入れていました。 証券マンが保険を売るの?と違和感を持つ人もいると思います。 生き残る為には証券会社も必至なので、富裕層が喜ぶものなら何でも世話をして商売にするという方針なのです。 例えばハウスメーカーと組んで、富裕層向けに家を紹介すると手数料が入ったりしてました。いずれは不動産やアパートにも手を出すのではと思ったこともあります。 つまり富裕層をターゲットとする業界同士がアライアンスを組むという構造が進んでいるのです。 僕が知る限り、銀行、保険会社、ハウスメーカーとはしっかり連携を組んでいましたね。 そのため超富裕層の情報は、金融機関にとっては大変価値がある訳です。少し怖い気もしますが😅 それから、対面証券とつきあうメリットとして、優秀なアナリストの資料やセミナーから学ぶことができる点が挙げられます。 庶民が恩恵を受けられるとすれば、この点だと思います。 僕も勤務中によくアナリストの分析資料を読んでいましたが、プロの視点で書かれた資料は投資の基礎力を上げてくれます。この点においては、ネット証券だと物足りないですね。
対面証券のデメリット
対面証券のデメリット
- 売買手数料が高い
- 劣悪な商品を紹介される
野村証券 | SBI証券 | |
---|---|---|
50万円 | 534円 | 0円 |
100万円 | 1034円 | 0円 |
300万円 | 3143円 | 1691円 |
500万円 | 5238円 | 2281円 |
野村證券とSBI証券の売買手数料を比較してみました。野村証券の店舗手数料はあり得ないほど高いので、今回はオンライン支店の手数料を採用しています。 結果を比べてみても、SBI証券の方がはるかに手数料は安いことがわかります。 そして高い手数料よりもはるかにタチが悪いのが、劣悪な金融商品を売りつけられるリスクがあることです。 そんな劣悪な商品の代表とも言えるのが仕組債(EB債)です。 ↓↓↓参考記事は以下のとおりです。
仕組み債にコスト開示義務 金融庁方針、24年にも – 日本経済新聞
金融庁は高い利回りをうたう仕組み債を個人投資家に販売する金融機関に対し、手数料などの顧客が負担するコストの説明を義務付ける方針だ。販売時にどれだけ手数料がかかっ…
金融庁がかなり問題視していて、手数料の開示などを来年から義務付けるという動きもあるようです。 仕組み債というのは、株を元にデリバティブで組成された金融商品になります。 デリバティブを複雑に組み合わせた金融商品であるにもかかわらず、債券のようなかたちで売りだされていて、中には10%を超える程の高い利回りのものもあります。 設定した価格を下回らない限り、元本と利率は保証される、というのがこの商品の売りです。 もし下回った場合はノックインというものになり、元本は保証されなくなります。 逆に、上回った場合は、ノックアウトと呼ばれ早期償還されることになります。 つまり損失は無限大なのに利益が限定されるというスキームの商品なのです。 誰が見ても損だと思いますが、それでもインカムが好きな人というのはいますので、結構需要があるんですよね。 ちなみに仕組債というのは、とにかく儲かる商品で、(取引金額によりますが)うちの支店だと一件あたり数百万円~数千万円の収益を計上していました😅 それからアクティブファンドも劣悪商品の一つです。購入手数料(税抜き)が3%、信託報酬料1~2%などは普通にあります。 商品を購入した時点で5%近くも取られることになるので、一年目で利益を出すのは難しいです。 なお個人投資家に人気のインデックスファンドだと、購入手数料0円、信託報酬料0.××%のものが普通です。 とても残念なことに、対面証券の営業マンが低コストのインデックスファンドを扱ったという話を、僕は聞いたことがありません。
対面証券の営業マンについて
証券マンの待遇・給与
証券会社の営業マンという仕事は、自分にあっていれば、これほど良いものはないと思います。 30代で年収1000万円どころか、2000万円近く稼ぐ猛者もいます。そして、出世も早く30代前半で管理職になるケースも普通にあります。 そして3年程度で転勤するので、家賃手当も厚いです。 残業は基本的に禁止されているので、18:00頃には帰宅できます。 すごくホワイトだと思いませんか? ただし、もしも知り合いから証券会社へご子息を就職させたいと相談されたら、即やめておけ!と答えます。 それは証券マンでさえ自覚していますが、ビジネスモデルがオワコンだからです。 ビジネスモデルのKPIがほぼ全てにおいて、ネット証券に負けている事実は覆しようがありません。 また主要ターゲットである高齢者の数がだんだん減っていき、これからはネットを使いこなせる年齢層に置き換わっていきます。 このような事情から衰退の一途を辿るのではないでしょうか。 それからよく知られていることですが、新入社員の離職率はとても高いです。 投資で損をさせてしまうというストレスに耐えきれず、だいたい3年以内に半分程度は辞めるか、営業から管理部門への異動を希望するというのが、よくある光景でした。
営業マンの投資スキル
証券マンは、投資はあまり上手くありません。 というのも、自分の証券会社で株を買うことはできるのですが、会社の規則で半年間売ることができず、売買機会が制限されているからです。 そのような制約があるので、売買技術が上達する機会がないのです。 その上、先物取引が禁じられているので、信用やFXなどはできません。 その意味では、株の銘柄には詳しいかもしれないけど、資産の運用には弱いと言えるでしょう。 それから証券マンが推奨する銘柄には問題があるので、アドバイスは極力受けないほうが無難です。 証券マンは、販売のプロですが投資のプロではありません。 日々投資の勉強というよりは、投資商品をどう売り込むかというセールストークの勉強をしています。 そして支店長をはじめ管理職の意向が働いた銘柄を薦めてくるので、注意したほうがよいです。
対面証券との付き合い方
そんな対面証券ですが、僕は積極的に接点を持つようにしています。 接点を持つために、僕は対面証券から国債を買っています。国債は手数料がかからないので不利益はないのです。そしてキャンペーンを利用すれば、おこずかいにもなります。 ではなぜ接点を持つようにするのか、それは対面証券のメリットを少しでも享受できるようにしたいからです。 IPOを紹介してくれる可能性もゼロではないですし、アナリストのセミナーや資料は大変有意義だからです。 さらに、僕もこれから高齢になっていきますので、相続の問題が身近なテーマになるかもしれません。 その時には強い味方になってくれることでしょう。 口座を持つことにコストはかからないので、少しでもメリットがあるのなら付き合っていく価値はあると思っています。 ただ営業マンのセールストークには注意したいですね。 そしていつかIPOをたくさん貰える身分になりたいものです。とても遠い世界ですが😅 了
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